お気楽シリコンバレーライフ

シリコンバレーで働くサラリーウーマンの思うところ、いろいろ

なぜシリコンバレーは強いのか

上司という立場になり、人をマネージメントするにあたってつくづく思ったことは、本当に結局良い仕事を成し遂げるのは「人」だな、ということ。人材がいかにビジネスにとって重要か、いや、人材の重要さは分野を問いません。スポーツの世界でも、芸術の世界でも、優れた人材の育成や登用の重要性は同じでしょう。

何を当たり前のことを言っているんだ、と思われる方もいらっしゃるでしょうが、この非常に基本的で当たり前のことが、シリコンバレーの強さを作っていると思うのです。シリコンバレーには様々なイノベーションを起こす人材がそれはそれは豊富にいます。それは何故なのか?いくつか理由を考えてみました。

1.強固なクラスターができあがっている

シリコンバレーというと、イノベーション、ハイテクのメッカ。グーグル、フェイスブック、アップル、テスラ、などなど時代の先端を走る企業がドーン!と本社ビルっつーか、キャンパスを構え、数え切れないくらいのテクノロジー関連の会社があります。ビジネススクールで習ういわゆるクラスターってやつです。シリコンバレーはハイテクのクラスター。多くの関連企業が集まってクリティカルマスを形成すると、どんどん規模が大きくなって、人材を惹きつけていく。これはシリコンバレーには限りません。俳優になりたい人はハリウッドに行き、金融関連で成功したければウォール街へ。そしてエンジニアはシリコンバレーへ。シリコンバレーに来れば、ソフトウェアのエンジニアなら何かしら仕事はあります。しかも高給。関連するスキルをや興味を持っている人材を惹きつける魅力がクラスターにはあり、シリコンバレーはエンジニアにとってとっても魅力のあるクラスターなのです。フェイスブックももともとはボストンで生まれたけど、本格的にビジネスを展開する段階になるとさっさとシリコンバレーに来たでしょ。クラスターは新しい関連ビジネスを惹きつけ、優秀な人材もそこに集まってくるのです。

2.人材供給源が豊富

 で、強固なクラスターを維持していくには、それを支えていく人達が必要。シリコンバレーにはエンジニアやビジネスを始めたい人達のフィーダースクールが沢山あります。シリコンバレーの大学というとスタンフォードが知られていますが、ほかにもUCバークレー、サンノゼ州立大学、サンタ・クララ大学などなど、いろんな大学があってそこの学生がそのまま地元の会社に就職していきます。優秀な人が多く集まってくるシリコンバレーなので、アイビー・リーグスクール出身者が多いのでは?と思う人もいるかもしれませんが、そんなことはないみたい。シリコンバレーで働く人達の出身大学のリストを載せたおもしろい記事を見つけたので、読んでみてください。

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3.世界中から優等生が集まってくる

地元だけでなく、全米から優秀なエンジニア達が集まってくるシリコンバレーですが、アメリカだけじゃなくて、世界中から秀才達が集まってきます。他の記事にも書いてますけど、私の同僚は本当にいろんな国の出身者がいます。ドイツに本社がある会社なので、ドイツ人が多いのは当然ですが、他にもスロバキア、ルーマニア、ウクライナなど、東ヨーロッパ出身者も多いです。アジア系ではやっぱり中国人、台湾人、そして韓国人も多いですね。ソフトウエアのエンジニア教育に力を入れたインドからは、本当に沢山のエンジニア達がシリコンバレーに来ていて、私の仕事場にもけっこうな数のインド人が働いています。そして、みんな優秀。同僚のトルコ人はフルブライトの留学生として、UCアーバインで博士号を取得。中国人の同僚は名門精華大学出身で、ペンシルバニア大学で博士号。もう一人の中国人の同僚は流暢な日本語を話すので、どこで勉強したのか聞いたら「東大で電子工学の博士号をとりました。」ですと。恐れ入りました。こんな人達がごろごろいて、全然特別じゃないんです。ちょっと話は逸れちゃったけど、アメリカの強いところはこうやって自分の国の人材だけではなく、世界中から人材が集まってくることです。しかもすごい優秀な人達がじゃんじゃん来る。日本も優秀な人達が海外に流出してしまうことが問題になっているようですが、働くのに魅力的な環境を整えないとシリコンバレーみたいな所に優秀な人材はどんどん採られちゃうんじゃないでしょうか。

3.差別が少ない

シリコンバレーを歩いていて気がつくのは、白人の割合が比較的少なくて、いろんな人種がごたまぜにいることです。これはマイノリティーにとっては非常のありがたい環境です。差別されることがあまりないから。アメリカでも他の地域、例えば東海岸などにいくと微妙に人種差別っぽいことを感じたりしますが、シリコンバレーでアジア人だからいやな思いをすることはまずないです。だってアジア人ばっかりなんだもん(笑)もし店員の態度が悪かったりする場面に出くわしたら、それは差別ではなくその店員は誰に対しても態度が悪いんです。人材を惹きつけることはできても、引き止めることができないと本当に魅力のある職場とは言えないでしょう。シリコンバレーは魅力のある仕事で優秀な人材を世界中から惹きつけ、差別されない住みやすい環境で暮らせることで、優秀な人材とその家族をシリコンバレーに引き止めているのです。

4.Pulling effect

で、こうして世界中から来た優秀な人達が何をするかというと、仲のよい友達、学校の同級生や先輩、後輩をシリコンバレーに誘うのです。日本でもそうですが、大学の同窓ネットワークが強いのはシリコンバレーでも一緒です。友人が転職活動をしていたのですが、ある会社について、メンバーのほとんどがデューク大学出身者で、たぶんデューク出身者じゃないと入れないよ、と、冗談交じりにこぼしてました。アメリカの会社では人を採用するのは人事ではなく直属の上司です。なので、人を雇うにあたってまずすることは「誰か良い人知らない?」と周りの人に聞きまわること。そしてリファーラル(紹介)奨励金がもらえることも。特別なスキルの持ち主はなかなか見つからないので、そういう人を紹介して就職につなげると、会社から3千ドルくらいもらえちゃったりします。で、紹介する人材はやっぱり友達とかですよね。で、友達は同じ大学の出身者が多いのは自然な成り行き。なので、ある大学の出身者がいると、その人の同窓生やら先輩やら後輩やらが紹介されて会社に入ってくることになるのです。こういうのPull(引っ張る)Effectって言います。これはマイノリティーでも一緒。インド人はインド人の友達が多いし、ドイツ人はやっぱりドイツ人のネットワークを持っている。だから、誰か知らない?となった時には、同じ国の出身者を紹介する(知り合いですからね)ということが多くなります。で、優秀な人はたいてい優秀な大学を出ているので、紹介してくるのもそれなりに優秀な人、と、良い循環作用がおきて、シリコンバレーにはどんどん優秀な人材が流れ込んでくるのです。ちなみにバークレー出身の台湾人の友人の集まりに行ったら、来ていた友人達(みんな台湾人)はバークレーかスタンフォードの出身者でした。やっぱり話す内容も賢かったです(笑)

 

こうして、世界中から優秀な人材が集まり続ける限りは、シリコンバレーの強さは続くんだろうな~、と、思うのですが、どうなんでしょうかね。