お気楽シリコンバレーライフ

シリコンバレーで働くサラリーウーマンの思うところ、いろいろ

日本とアメリカの人事制度の違い

まず最初にお断り。日本とアメリカなんて大風呂敷感満載のタイトルではありますが、これは私が日本で働いたことのある会社(一社)とアメリカで働いたことのある会社(これまた一社のみ)の比較です。でもまあ、一般的にはこんなもんだろうな~、みたいな感じはつかんでもらえると思います。

で、比較するのは採用、異動、人事評価の3つにしときます。

採用

私の経験では、日本とアメリカで一番違うのはここですかね。日本で新卒で就職したときは、人事の担当者の人との面接があり、採用後に配属が決められました。一時転職しようかと考えた時期があり、他社での面接も受けたのですが、やっぱり面接は人事部の人とでした。

アメリカでの採用権限は人事ではなくマネージャーにあります。少なくともうちの会社では。私の部署で欠員ができると、私が面接をして私が採用を決めます。

じゃ、人事は何をするのかというと、採用のお手伝い。まず私が人事に、今度欠員ができたんだけど、求人のお知らせ出してくれる?と連絡します。そうすると、どの職種のどのレベルの人を探しているのかを聞かれ、それに合ったJob Description(具体的な仕事の内容やら仕事に必要な経験やらをかいたもの)を探してくれて、求人広告を社内および社外に出してくれます。求人広告を見て応募してきてくれた人の履歴書を見るのはマネージャーの私の仕事。履歴書の段階で、会ってみたいと思った人材がいたら、人事に連絡して面接の手配をしてもらいます。誰が面接をするのかを決めるのも私です。別に私一人が面接をして決めても良いのですが、他の人の意見も聞きたい時には信頼できる同僚や部下に面接してもらい、彼らの意見を聞くこともありますが、最終的には私が面接して、私が採用を決めます。で、採用したい人がいたら、「この人に仕事をオファーしてください。」と人事部の担当者に連絡。で、人事の担当者が私の選んだ人の経歴やら仕事のレベルやらを吟味して、お給料をどれくらい払えば良いのかを調べてくれ、「これでオファーしますけど、良いですね。」と私との合意をとって、応募してくれた人にオファーの連絡を入れます。また、応募してきてくれた人から私に直接「採用の件はどうなっていますか?」と連絡が入ることがあるのですが、そうした問い合わせに答え、「今回は残念ながら不採用です。」という連絡も人事がやってくれます。

人事部が勝手に採用して、勝手に配属してくるわけではないので、入社してくる人に対して文句は言えませんね。私が採用したわけですから。

異動

日本だと本人の希望とはあまり関係なく異動があると聞きますし、以前勤めていた会社でも「あの人がなぜこの部署に?」と、本人も「聞いてないよ。」的な異動もありました。今のところアメリカでは聞いたことないですね。部署の異動は基本的には本人の希望、そして社内公募、もしくは特殊な事情。

特殊な事情とはどういうことかと言うと、今就いている仕事がなくなっちゃう、というときレイオフの代わりに、「この部署のこの仕事に空きがあるからどう?」というケース。または、この人のパフォーマンスはこの部署ではイマイチだけど、あっちの部署ならなんとかなるかも、という時も「あっちの部署の仕事した方が良いんじゃない?」ともちかけるケースもあります。どちらにしても、新しい部署に異動したくない場合は、会社をやめることになります。

私は今の会社でいくつか職種、そして部署を変えましたが、ひとつを除いて後は全て社内公募です。ひとつを除いての時は、役員秘書の仕事をクビになって他の部署の仕事をオファーされたとき(笑)いや~、秘書には本当に向いてませんでした。

社内公募の場合も、もちろん採用マネージャーとの面接があり、候補者も何人かいるので採用されない場合もあります。採用されなかった場合には、現在いるポジションで継続して働き、次に興味のそそられるポジションが出てきたらまた応募する、となります。社員が他の仕事に応募することに、上司はあまり抵抗しませんね。私の場合も歴代の上司達は新しい仕事にチャレンジすることを喜んでくれ、そして応援してくれ、気持ちよく送り出してくれました。

人事評価

私は日本では管理職したことないので、比べる材料があんまりないんですよ。すみません。なもんで、今働いている会社のこと書きます。

うちの会社の場合、年度初めに今年度の目標!というのを立てさせられます。で、年度末になると社員全員が上司と面談し、今年度はこんなことしました、あんなことしました。改善点はこれです。次はあの部署に行って、こんな仕事したいです。世界中どこでも異動オッケーです!みたいなことを話します。

で、各部署ごとにラウンドテーブルというディレクターレベルでの人事考課の場が設けられ、人事部のマネージャーがファシリテーターとなって社員の人事考課を行い、評価の良し悪し、そしてボーナスの割合を決めていきます。

ちなみにボーナスは12月に支払われ、年一回。会社によっては一部の人(一定の職務以上)しかボーナスを受け取る資格がありません。私のいる部署も以前はボーナスなしの社員がいたのですが、数年前に改定があり、全員がなんらかのボーナスを受け取れることになりました。で、仕事のランクによってどれくらいもらえるかが全然違います。例を挙げますと、若い社員だと年収の5パーセントなのが役員クラスだと年収の30パーセントとか。この%っていうのがミソ。だって若い社員だと年収も低い。低い年収に低い%、例えば5万ドルX5%だとボーナスは2500ドル。役員だと、まあ年収が30万ドルとして、30万X30%でボーナスは9万ドル。全然違うでしょ(笑)人事評価のミーティングでは、このボーナスを、これまた何割支払うのか、ということを決めるのです。例に出した年収5万ドルのA君の基本ボーナスは2500ドル。でも、A君、今年は滅茶苦茶頑張って仕事して、会社に大貢献。じゃあボーナス150%あげよう、ということでA君のボーナスは2500X150%となり、A君は3750ドルのボーナスをもらえるのです。そしてその逆もあり。こいつイマイチ、となった場合にはボーナス半額、とかね。

そして必ず話し合うのは誰が次の世代を背負える人材か、誰が能力があるか、幹部候補生として育成すべきは誰か、ということ。そして、こいつはイケルとなった人には様々な幹部向けの研修の機会が与えられ、大抜擢されることもあります。これを目の当たりにして思ったことは、アメリカは機会平等の国かもしれないけれど、結果は滅茶苦茶不平等だということ。そして、それをある程度納得して受け入れる土壌があるということです。だってさ~、普通に仕事してるけどたいして目立たない社員達は、人事考課の話題にも上らなかったりするんだよ。重点的に議論されるのは誰が優れているかと、誰が落ちこぼれているか。優れている人には研修やキャリアパスの用意を、落ちこぼれているひとにはパフォーマンス向上の施策、もしくは退職を促す手順。で、その他大勢は、今年もよくできました。ボーナス100%あげるね。で終わりです。

日本でも横並びの終身雇用型モデルが崩れてきているみたいですが、将来の人事制度のモデルってどんな風になるんでしょうね。たぶんアメリカほど「できる人が全部持ってく」みたいなモデルにはならないと思うんですが。日本人は優しいから。

さてと、来週の金曜日のラウンド・テーブルに向けて、私も準備しなきゃ。